これだけ押さえればOK
トロイア戦争に勝った知将オデュッセウスが、故郷イタケに帰るまでの物語。原作は紀元前8世紀ごろに成立したとされるホメロスの叙事詩です。
帰り道では海神ポセイドンに阻まれ、怪物や魔女のいる島々をさまよいます。
故郷では妻ペネロペと息子テレマコスが帰りを待っています。館には妻に再婚を迫る男たち(求婚者)が居座り、財産を食いつぶしています。
物語は「旅をする父」と「家で待つ妻子」の二つの線で進みます。
キーワードはゼウスの掟。旅人や客人をもてなし、客は主人を害さないという古代ギリシャの掟です。詳しく
背景:トロイア戦争
映画は戦争が終わったところから動き出します。そこに至る流れは次のとおりです。
- 1
スパルタの王妃ヘレネが、トロイアの王子パリスとともにトロイアへ渡る。
- 2
ヘレネの夫メネラオスの兄、ミュケナイ王アガメムノンを総大将に、ギリシャ諸国の王たちが連合軍を組んで出兵する。イタケ王オデュッセウスもその一人。
- 3
トロイアの城壁を前に、包囲戦が10年続く。
- 4
オデュッセウスが立てた木馬の策でトロイアが陥落する。ここから帰郷の物語が始まる。
舞台の位置関係
戦争の終盤を描いたのがホメロスのもう一つの叙事詩『イーリアス』で、『オデュッセイア』はその後日譚にあたります。
押さえておきたい3柱の神
神々の王。旅人と客人を守る神でもある。
海の神。オデュッセウスの帰郷を阻む。
知恵と戦いの女神。オデュッセウスの守護神。
20年の不在
オデュッセウスが家を空けていたのは計20年。テレマコスは父の顔を知らずに育ち、ペネロペは夫の生死もわからないまま待ち続けています。
主な登場人物とキャスト
旅をする者
- オデュッセウスマット・デイモン平田広明
イタケの王。腕力より知略・嘘・忍耐で道を切り開く英雄。
- エウリュロコスヒメーシュ・パテル
帰路の船団の副官。決断をめぐってオデュッセウスとたびたび対立する。
イタケで待つ者
- ペネロペアン・ハサウェイ坂本真綾
オデュッセウスの妻。再婚を迫る求婚者たちを知恵でかわし続ける。
- テレマコストム・ホランド榎木淳弥
息子。父の顔を知らずに育ち、家の危機に向き合う。
- エウマイオスジョン・レグイザモ
オデュッセウス家に仕える豚飼い。主人の帰りを待ち続ける。
- メラントーミア・ゴス
館に仕える侍女。
館に居座る者
- アンティノオスロバート・パティンソン江口拓也
求婚者たちのリーダー格で、最も傲慢な男。
神々と、旅で出会う者
- アテナゼンデイヤ白石涼子
知恵と戦いの女神。オデュッセウスを見守り、導く。
- カリュプソシャーリーズ・セロン本田貴子
海の果ての島に住む不死のニンフ。
- キルケサマンサ・モートン
人を獣に変える力を持つ魔女。
- ポリュペモスビル・アーウィン
ポセイドンの息子で、一つ目の巨人キュクロプスの一人。
トロイア戦争の人々
- アガメムノンベニー・サフディ
ミュケナイ王。ギリシャ連合軍の総大将。
- メネラオスジョン・バーンサル坂詰貴之
スパルタ王。アガメムノンの弟で、ヘレネの夫。
- ヘレネ/クリュタイムネストラルピタ・ニョンゴ水樹奈々
一人二役。戦争の発端となったヘレネと、その姉妹でアガメムノンの妻クリュタイムネストラ。夫同士も兄弟です。
- シノンエリオット・ペイジ内田雄馬
木馬の策でトロイア人を欺くギリシャ兵。ホメロスではなく、ウェルギリウス『アエネーイス』に登場する人物です。
語り手
- 楽人トラヴィス・スコット武内駿輔
英雄の物語を歌い継ぐ吟遊詩人。ノーランは、口承で伝わってきた詩とラップの近さを起用の理由に挙げています。
知っておくと深まる4つの視点
ゼウスの掟
古代ギリシャでは、見知らぬ旅人でももてなし、客は主人に害をなさないことが神聖な掟でした。ゼウスはこの掟の守り手です。旅先の島々でも、求婚者が居座るイタケの館でも、誰がこの掟を守り、誰が破るかに注目すると筋が追いやすくなります。
知略の英雄
オデュッセウスは力ではなく、策と作り話と我慢で切り抜ける英雄です。英語の "odyssey"(長い放浪の旅)はこの作品から生まれた言葉です。
時間の組み方
原作は時系列どおりではありません。帰郷10年目から始まり、それまでの冒険の多くはオデュッセウス自身の回想として語られます。『ダンケルク』で3つの時間軸を交差させたノーランが、この構成をどう組み替えるかが見どころです。
もう一つの帰郷
原作では冒頭から、同じくトロイアから帰国した王アガメムノンの家の話が繰り返し語られます。二つの家を比べながら観ると、ペネロペとテレマコスの立場がより鮮明になります。